大野あさり育てる「大野方式」天皇杯受賞
2020年12月18日

前潟干潟研究会

下戸成代表が松本市長に天皇杯受賞を報告

大野あさり
【廿日市市大野】廿日市市大野地域で「大野あさり」の生産に取り組む前潟干潟研究会が、農林水産省の農林水産祭で最高位の天皇杯を受賞した。10日、下戸成治美代表をはじめ関係者が、11月の東京都での表彰式で受け取ったトロフィー、賞状、天皇杯授与簿を手に、同市の松本太郎市長を表敬訪問。受賞の喜びを報告した。
【「地元の誇り」松本市長】
同研究会は、食害などで減少傾向にあったアサリ漁獲量の対策で、稚貝を干潟表面の砂ごと網袋で採苗し保護・育成する独自手法「大野方式」を考案。生産量の安定確保、干潟の保全、資源再生につなげていることが評価された。昨年12月には、大野あさりが同省の地理的表示(GΙ)保護制度の対象に登録された。
松本市長は「関係各人の工夫によって生まれた大野方式が受賞したことは地元の誇り」とたたえた。
下戸成代表は「光栄に思う。大野あさりを全国にアピールしていきたい」と、今後に向け意欲を高めていた。
【アサリ守る前潟干潟研究会】
同市大野地域の3漁協の有志が集い、アサリ資源再生のため2013(平成25)年に、同研究会は立ち上がった。当初は10人に満たなかったという。
発足から二年後、大野方式を開発。だが、稚貝を目で確認できない時期の作業のため「稚貝が本当にいるのか、みんな最初は半信半疑。「こんなことしてどうするの」と言う声もあった」(下戸成代表)と振り返る。約300袋を並べ、数カ月後、ふるいに掛けた網袋の砂から成長したアサリが現れると、安堵の笑顔が広がったそうだ。
【広島ブランドへ課題克服目指す】
広島県や廿日市市、研究機関の協力の下、網袋に砂を詰める前、稚貝の生育場所をGPSで管理することで成果を上げた。開発は進み、近年では網袋の数が1万袋以上になるという。
下戸成代表は「多くの人の協力があったからこそ」と目を細める。作業は夏の炎天下で、潮が引いたときだけの限られた時間。干潟にはトイレがなく、網袋は重い。過酷な現場に、最高の賞が労いを与えた。
「天皇杯をいただき、大野あさりが広島のブランドとして注目される。漁獲量の確保は課題。協力者を増やし、できるだけ効率の良い方法で次につなげていきたい」と話していた。