| 2006年(平成18年)3月31日912号 |
▼予て知り合いのMさん方は国道186号線沿いの山里にある。所用での通りがてら立ち寄ると前庭にある桜の木はまだ蕾みのままであった。そばに桐の古木が二本あってひときわ目立つ。こちらは赤ん坊の掌ほどの葉っぱが伸びている。おばあさんによると今は亡き夫が戦後すぐに孫娘が生まれた際に植えたという。
▼昔の人は女の子が誕生すると成長の早い桐の木を植えて家財道具のための備えをした。嫁にゆくときにはこの木で箪笥や下駄箱、小物入れなどをしつらえて持たせる。わたしがこの家に嫁いできたおりに持ってきた総桐タンスは座敷の奥にあって今も使っている。結局は時代も移り変わってこの木を利用することはなかったが切り倒す気にはとてもなれないとのこと。まいにち、新聞に目を通すというおばあさんが、昨今のPSなんとやらマーク(電気用品安全法)をめぐる騒ぎのことに触れて古いものを大事にせんといけんよね、と言ったのには正直驚いてしまった。
▼山をくだって海沿いの国道まで辿りつくと、そこここに立つ桜の木には、赤みを帯びて今にも弾けそうな風情のつぼみがいっぱい。一気に春。
ことしまた花見の顔を
合せけり 召波
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