閑静な住宅街に建つ普通の民家に、店の看板が―。最近、自宅の一部を開放、あるいは改装して商品を販売している店鋪が増えている印象があります。外観は普通の住宅のままなので、うっかりすると店名入りの看板を見落としてしまうほど、見つけにくい場合もあるようです。ジャンルは手作り小物や陶器、宅配の弁当などいろいろ。利益よりも「社会とのコミュニケーションを取りたい」、「情報発信したい」方に天秤が傾いている店があれば、家族経営で利益もなくては、といった店もあり、傾向に差があります。全体的に、子育て中や子育てを終えた主婦などが、趣味や特技を生かして、自分たちの時間を有効利用しながら無理のない範囲で頑張っているようです。地元西広島地区の、そんな自宅店鋪をいくつか歩いてみました。

▲自宅の離れを店舗に改装。緑の家が目印
|
来夢来人
リサイクルショップ
広島市佐伯区倉重1-147-3
TEL(082)924・1047
「モノ好き」の椴木皓子オーナーが、「子育てが終わったから」と、自宅の離れを改装して約一年前にオープン。ブランドもののバッグや宝石など、自分のものを売りながら、依託品も合わせて展開しています。店鋪を借りようか迷ったそうですが、経費を抑えられる自宅店鋪にしたそうです。「買うよう客に勧めなくてすむ」と笑顔。好きなものに囲まれて毎日楽しいそうです。「人や話が好きでないと務まりませんね」とアドバイス。

▲二階の一室がメインだが、玄関にもピエロが
|
アトリエピエロ
手作り小物
廿日市市阿品2-5-23
TEL(0829)36・1785
手作りのピエロ人形や、知り合った作家の手作り作品を展示・販売しています。店鋪は、嫁いだ娘の一室を改装。玄関先にもたくさんの作品が並んでいます。それにしても、毎月一回だけの営業は、少なすぎるのでは。「自分でピエロを作ってますから」と石田詞子オーナー。もうけはともかく、出品してくれる作家との輪は広がったと言います。「よそと違うことを」と、アイディアを練りながら和気あいあいとやっているそうです。

▲一室を改装。隣のリビングで客と談話もする
|
ギャラリー嶋屋
陶器・吹きガラス
広島市佐伯区河内南2-34-27
TEL(082)928・7289
器好きが高じて、一年半前に開店。「本当は店鋪が良かった」(竹田ちづるオーナー)が、子育てしながらできるから、と住宅団地の自宅の和室を和洋折衷に改装して始めました。オーナー自ら厳選した器が並ぶ一室の隣りは、リビング。ここで客と器などの話に華を咲かせているようです。「趣味の延長、とは思われたくない」ときっぱり。いずれは広島になかったタイプのギャラリーを、と目的をしっかり見据えています。

▲和室二部屋を利用。仏間などを利用し器など置いている
|
ままごとや
田舎料理
廿日市市栗栖89-1
TEL090・9509・5879
人に貸していた家が空いたから、と二年前にオープン。「自分の田舎の家にいるみたいに、時間を忘れて話してた」と言う客も多い、気の置けない店です。古き良き民家そのままの店内、ほかに客がいない気安さ、周りの田園風景がそう感じさせるのでしょうか。一日一組の予約制だけに、「もうからないけど、趣味と実益を兼ねてますから」(倉本総子オーナー)。家庭をおろそかにしないために、午後五時からは店の電話を切るという工夫をしています。

▲店舗部分はもともと車二台分のガレージ
|
Latte Latte(ラテラテ)
ジェラート&ビーズジュエリー
広島市西区井口台3-25-28
TEL(082)278・9840
去年の三月にオープンしました。厨房器具のメーカーに勤めていた小原博文オーナーが、自宅のガレージを改装して始めた手作りジェラートとビーズジュエリーの店です。「場所も重要だが、商品の工夫がより大事」というジェラートは、材料にこだわり、製法にも一工夫。週末ともなれば、車の行列ができるそうです。閑静な住宅地にあるため、「駐車など、少し近所迷惑もあります」と、開店してみないと分からない問題点も教えてもらいました。家族経営なので「趣味」というわけにはいきません。

▲キッチンを改装。宅配だが外には看板もある
|
キッチンハウスポテト
宅配弁当
廿日市市四季が丘上5-12
TEL(0829)38・7370
宅配弁当の自宅店鋪です。保健所の検査をクリアするために、キッチンなどを改装。夫婦とパートでやっているので、「趣味の延長」というわけにはいきません。「添加物を一切使用しないことと、手作りがセールスポイント」と井上都紀代オーナー。妊娠中や、子どものいる家族などに支持されているようです。もともと別の場所で店を構えていましたが、三年前に家庭と両立させるため自宅からの宅配にしたと言います。

▲思い切って商店街に自宅を構える道も
|
井筒屋
リサイクルショップ
廿日市市廿日市2-3-3
TEL(0829)32・9225
廿日市駅前商店街に面しているため、自宅とはいえ一般の店鋪。二十三年前にお店をやろうと居を構えたそうです。自宅購入前なら、こういう道もあります。百貨店ブランドの子ども服店でしたが、四・五年前にリサイクルショップに。店の特徴は、百貨店メーカーに絞っている点。「メーカーが分かれば、定価が分かる。その方が安心して売れるし、買えるでしょう」と坂本真由美店長。他店との差別化を図っています。
どのオーナーも「楽しいですよ」と口をそろえます。自宅の一番の利点は、何といっても経費の節減。先行投資は抑えられますし、店鋪としての家賃を払う必要がありませんから、売り上げや毎月の支払いを気にする必要はありません。
ある店長は、「見つけにくい中来るのだから、(商品やジャンルが)好きな人ばかり」。利用者との距離も近いようで、いろいろな話もするそうです。基本的に、どの店も「見るだけでも気軽にどうぞ」というスタンスなので、客も安心して楽しめるようです。
店の種類などでそれぞれ事情は違うようですが、店長たちは「ほかの店にはない、特徴のあるものを」と異口同音。一般の店鋪のように、不特定多数が出入りするわけではないので、来客に満足してもらうための一工夫に智恵を絞っているようです。
起業・創業と大げさに考えず、まずは趣味を生かして、ほんのちょっぴりスケールアップするくらいの軽い気持ちであなたもチャレンジしてみては、と書きたいところですがご用心。
「趣味の延長と思われるのは心外」と、あるオーナー。「代金を頂く以上、おかしなものは出せない」、「(店なのかそうでないのか)中途半端な態度は、客に失礼」など、どの店長も表情を引き締めます。逆に言えば、このポリシーも客に安心感を与えている一つの要素なのでしょうね。
取材した店はどこも不退転の重い決心をして開店をした、というわけでもないようす。年の初めに、趣味や特技を生かしたいろんな可能性を思い描いてみるのも、面白いと思います。
Copyright© L.co All Rights Reserved.