▼あるときは俯せしまま朝の蝉=赤尾兜子。窓を開け放って就寝するから朝、白み始めるころからシャーシャー、ジージーと蝉時雨に襲われてたまらず起きあがる。目覚し時計のセット時間より、かなり早いから三文の得とでも言えようか。
▼人との待ち合わせや商談の席、いろんな会合などの集合時間に遅れるほど具合の悪いことはない。先ごろある製造メーカーの取引業者の会に出席したがA社の担当者は十分遅れで会場に入ったが挨拶中のその社のトップに睨まれて縮みあがっていた。身辺にも遅刻常習者がいて、その強心臓振りに呆れている。小心者にはとても出来ないこと。いかなる場合でも十分ほどの余裕を持って臨みたいと思う。
▼いつも通る坂道の樹木の許には蝉の脱け殻が随分と落ちている。いわゆる空蝉である。傍らにはひっくり返って既に死んだものも見受けられる。蝉の幼虫は数年から十数年の間、土の中で蛹(さなぎ)として育ち地上に出て樹にのぼり背を割って皮を脱ぎ飛び立つ。せいぜい一週間の生命といい、これを哀れと言うのは人間の勝手なのであろう。
病むもよし 死ぬもまたよし 油蝉 長谷川秋子
空蝉を 妹が手にせり 欲しと思ふ 山口誓子
Copyright© L.co All Rights Reserved.